事例紹介

観光コンテンツを訪れる観光客の特徴やニーズを可視化
生の声や実際の移動ルートをリアルに把握できた

神奈川県内の観光コンテンツに対する国内外の観光客の認知度・評価の分析のために、ソリッドインテリジェンスのソーシャルリスニングレポートサービスをご利用いただいた神奈川県様にインタビューを実施しました。今回は、その内容をご紹介させていただきます。

左から 三浦課長、今福様、熊澤様

観光エリアの中で、観光客が具体的にどう行動したかを把握したかった

三浦課長

Q. 神奈川県の観光について、現状の課題と、SNS分析を実施した経緯について教えてください

A. 三浦課長:今回の調査事業にあたっては、県でこれまで実施してきた情報発信などのプロモーション施策が実際に来訪につながっていたのかを検証したかった、という背景があります。

神奈川県ではこれまで「1000通りのツアーを造成する」ことを目標に、県内における観光コンテンツの発掘と磨き上げ、およびそれらを活用したルート造成に力を入れて取り組んできました。しかし、2019年のRWC開催時にもプロモーションは実施したのですが、その結果として観戦客は実際に県内の観光コンテンツを回ったのか、プロモーションの効果について第三者による検証、特にデジタルデータを活用した検証は実施していませんでした。

そうした経緯に加えて、庁内でもEBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)が推進されている中で、国外の観光展への出展や、商談会でのコンテンツ提供、WEBサイト “Tokyo Day Trip” における発信など、今までに実施してきた様々なプロモーションが結果として実際の観光客の観光地への来訪につながったのかがわからなかったというのもあります。そうした経緯を踏まえて、実際の来訪状況を把握するための方法のひとつとして今回はSNS調査・分析を実施する運びとなりました。

今までもSNS調査に代わるものとして、RESAS(地域経済分析システム)における公開データを参考としたり、モバイル空間統計を利用した調査を実施したりしていました。しかしそれらのデータでは、例えば1㎞四方のエリアの中にどの国籍の人がいたかということはわかるのですが、具体的に鎌倉の中で円覚寺を訪れた、鎌倉大仏を訪れた、長谷寺を訪れたというような、観光コンテンツごとの観光客の動きがわかりませんでした。

観光客がエリアの中でどういった行動をしたかを一番把握したかったですし、把握しないと効果的なプロモーションが打てないので、観光客が具体的にどこを訪問したのか、どんな評価をしているのか、また、国や地域によってその評価に違いはあるのか、などが明らかになることを期待してSNS分析の実施を決めました。

Q. 他社ではなく、弊社をお選びいただいたポイントは何でしょうか

A. 三浦課長:今回は企画競争でソリッドインテリジェンスさんを委託先として選定しましたが、その中身として、SNS分析事業における豊富な受注実績があること、また、過去の他団体における事例を参照したところ各自治体の観光コンテンツの課題や活用方法が他社に比べて具体的に提言されていたことなどが挙げられます。我々としては、今後のプロモーションに利用可能な分析ができることに重点をおいていたので、我々の求めるニーズに対する提案がしっかり書かれていた点が高い評価につながったと審査員から伺っています。

Q. 総合的な今回の事業の成果と、感想を聞かせてください

A. 三浦課長:今回の調査では、観光コンテンツを訪れる観光客の特徴やニーズを可視化できたということが非常に大きな成果だと思っています。

神奈川県では入込観光客数調査を毎年実施しており、観光コンテンツごとの訪問人数は把握できていたのですが、どの国籍の人が来ているか、そもそも国内か国外から来ているのかもわからず、またその訪れた人たちがどういった感想を持っているのか(ポジティブなのかネガティブなのか)もわかりませんでした。それが今回の調査で把握できたことは成果として感じています。

今まではプロモーションを打つにしても、担当者の経験やノウハウに頼っていた部分があったのですが、今回の調査ではそういったものに頼らず、分析結果というエビデンスがとれたことは非常に大きいと感じており、プロモーションにおけるターゲット国やコンテンツ選定の論拠として活用する予定です。

さらに、どのコンテンツがどの国籍や地域の方に響くのかという、観光客の持っている評価やニーズは数値ではなかなか表せないと思いますが、今回の調査ではそうしたニーズや評価を投稿件数やセンチメント別の話題量といった指標を通じて可視化することができました。このように、観光客の特徴やニーズを可視化できたことは今回の事業における非常に大きな成果だと思っています。

ネガティブな要素を可視化できたのは、SNS調査で得られた収穫

熊澤様

Q. SNS分析の結果をご覧になり、意外だった結果や、想定以上の成果、新たな発見が得られたことはありますか

A. 熊澤様:中国に関してですが、箱根の美術館に関する投稿が多数なされていたのが印象的でした。花が人気というイメージはある程度あり、実際に紫陽花に関する投稿も多く見られたのですが、中国に対して美術館や芸術・文化関係のプロモーションをするというイメージがあまりなかったので、「もしかしたらこういった内容が響くかも」ということがわかってよかったです。今後プロモーションするうえで、織り交ぜていきたいと思っています。

また、神奈川には、東京を拠点にして訪れる人が多いというイメージがありましたし、外国人の方は日本に来たら全国いろいろなところを訪れるイメージがあったので、神奈川に来るとしても1日きてすぐ次の場所に行ってしまうというイメージがありました。しかし観光客の移動ルート分析を見ると、東京から箱根に来て、東京に戻り宿泊し、その次に鎌倉に来るといった事例があり、県内での周遊ではなくても東京を拠点に複数の個所に来ていただくケースがいくつもあり意外な発見でしたし、そういった移動をしながら神奈川県に来てくれる方もいるのだなと新たな気づきがあってよかったです。

他にも、プロモーションする時のイメージは、欧米系とアジア系という分け方で考えていたのですが、実際の傾向をみると、台湾は欧米寄りの傾向が見られて、単純に「アジア」「欧米」という分け方で考えられないですし、気を付けないといけない点だなという気づきにもなりました。

Q. 印象深かった調査手法は何でしょうか、その理由や感想も聞かせてください

A. 熊澤様:報告書の中で一番目に留まり、読みごたえもあり、いろいろなことが見えてくるなと思ったのが、移動ルート分析です。観光客が移動している経路はもちろん、報告書の見せ方として、ただ単に移動している経路を表しているだけでなく、観光客がどういった内容の投稿をしているのかを写真とともに投稿内容を可視化していただいて、生の声や実際どのように移動しているかがリアルに把握できたことが良かったですし、印象深かったです。

Q. SNS分析結果をご覧になり、課題が可視化された点や、仮説が立証されたことはありますか

A. 熊澤様:仮説が立証されたということではないですが、観光客の受入環境整備に関して、旅行者が実際どのような点に不満を感じているのかわからない部分があったのですが、今回の調査で、「ホテルの多言語対応が不十分」「トイレの衛生状態が良くない」「トイレが有料で不満」といったネガティブな要素が可視化できたのが、SNS調査で得られた収穫でした。

また、我々の外国語観光情報ウェブサイト「Tokyo Day Trip」は「東京から日帰り」という意味で、神奈川県のサイトですがあえてそういう名前をつけたのですが、移動ルート分析を見ると、実際に日帰りで来ている方が多いというのがわかり、仮説のもとでこういう名前にしていたのは正しかったのだなと確認でき、裏付けができてよかったです。

一番魅力的だったのは、「観光客の移動ルートがわかる」ということ

今福様

Q. SNS分析をする前のイメージと、分析後の違いや新たな気づきなど、SNS分析を実施した感想を聞かせてください

A. 今福様:SNS分析を調査方法として検討した時点では、SNS分析は投稿量や拡散状況、ポジティブやネガティブの評価が把握できるなど、「表面的でわかりやすい部分の評価を可視化する程度かな」という先入観が最初はありました。

ただ、SNS分析調査を委託すると決めた段階で、事前にどのような調査ができるかというのを聞かせていただいたのですが、想像以上だったのが、各観光地に対する具体的な評価内容がわかるということ、キーワードの件数などのわかりやすい結果だけでなく評価の内容がわかるということ、そして一番魅力的だったのは「観光客の移動ルートがわかる」ということ、これが一番びっくりしました。「移動がSNSでわかるのか」と最初は目から鱗だったのですが、非常に魅力的でした。

また、受入環境の課題も、観光客の感じている評価をそこまで出していただけるのは魅力的だなと思います。そういった部分が、最初素人目に見ていた「SNS分析とはこんなものかな」と思っていたものと、事前の打ち合わせで「こんな調査ができる」と聞いたことが一番際立って違いを感じた点です。

Q. 弊社への感想を、事業実施前の期待(不安)と、満足度の観点から聞かせてください

A. 今福様:いただいた資料から十分に調査の実績があり、その分野に精通されているということがわかったので、御社にお願いすることに対してなんら不安はありませんでした。ただ、我々はSNS分析を実施する経験が乏しく、神奈川県では過去にSNS分析を実施しているものの、庁内で活用しきれていなかったということがあり不安を感じていました。しかし報告書を拝見したり、途中のやり取りを見ていても、非常に人手をかけて、手間をかけて調査・分析していただいているのがよくわかり、評価として「御社にお願いしてよかった」と思っています。

SNS分析自体は、キーワードや期間を設定すればこの時期に件数が伸びてという感じでやるのだと聞いたことがあり、意外とパパっとやってできるようなものだと思っていたのですが、「楽にやれば楽にできるのだろうけど、そこは手を抜かず、非常に人手をかけて投稿の中身を読んでいただいている」と感じていました。そういった点で御社にお願いしてよかったと思っています。

その中で、先ほど熊澤から話があったように、「箱根エリアで芸術関係の関心が高い」という気づきがありました。神奈川県では今後、富裕層や上質な観光を求めている層にアプローチしていこうと思っていますので、箱根エリアでどんなコンテンツが受けているかといったことがわかってよかったです。また、個人的には江之浦測候所を知らなかったので、この調査で写真映りもよく、素晴らしいコンテンツが県内にまだあったのだと教えてもらい、今後の施策にも非常に役立ち活用できるのではないかと思っています。

国籍ごとに、好まれる観光コンテンツが異なることが明らかになった

Q. 今回実施した事業の調査結果を、今後どのような施策反映に活かしていくご予定でしょうか

A. 三浦課長:予算との関係があるので細かいことは言えませんが、プロモーションと受入環境整備の2点に反映していかなければいけないと思っています。具体的な施策としては、Webサイトのコンテンツの出し方の見直しなどを検討しています。今までのwebサイトの運営では明確なエビデンスがないまま発信してきていましたが、今回の調査で国籍ごとに好まれるコンテンツが違うことが明らかになったので、例えば、言語別におすすめのページを作り、季節ごとにコンテンツを変えて発信していくことなどを考えています。

Q. 今後インバウンド施策を進める上で、SNS分析を利用してさらに把握したい情報や、実施したい調査、またデータを活用して把握したいことなどがあれば教えてください

A. 三浦課長:SNS調査は、観光客のニーズを探るのに適した手法だと思っています。他の調査、例えば国が実施している統計調査や県でも実施している入込観光客数の調査では、観光客のニーズは把握できません。その点、SNSでは観光客のニーズがわかり、しかもデジタルなのでタイムリーに把握できるところが強みだと思っています。

一方、評価した方が実際に訪問しているわけではなく、人から聞いたりして投稿している場合もあります。Instagramだと写真も載せているので、おそらく観光客の投稿だと推測できますが、Twitterだとわかりにくく、投稿者が実際にきたかどうかがわからないので、そこをなんとか把握したいと思っています。ソリッドインテリジェンスさんに実施していただいたような評価に紐づけて移動ルートの把握を強化・充実していけたらなと思います。

そうしたところがわかると、観光客の行動がわかり、観光客がどこから神奈川県にきて、どこの観光地に寄って、どういう消費行動をしたかといった一連の流れが把握できます。観光客の行動を把握することは我々にとっても難しく弱点だと思っているので、もし今後予算を組んで調査するのであれば、そこを改善する手法を考えたいですね。

仮説を立てるときの材料として、SNSの評価や観光客のニーズは最重要

Q. 今後神奈川県の観光を盛り上げていくにあたり、目標や重要視していることなどはありますか

A. 三浦課長:観光客のニーズはコロナ前後によっても変わったと思います。例えば国内の観光をみても、マイクロツーリズムや三密の回避など観光客の意識や行動がコロナ前後で全く違うと思います。そういうニーズを把握できるのがSNS調査の武器だと思っています。コロナ後も見据えてプロモーションなどの施策を打っていくために、そういった観光のデータは絶対に必要だと思っていますし、そこには観光客のニーズが一番重要だと思っています。そのニーズを把握するためにも、SNS調査は貴重な手段であると感じています。

今回のSNS分析以外にも、観光客のニーズをはかるような調査、例えば観光客に直接対面してヒアリングしたり、受入側のコンテンツに対して観光客が訪問した要因を探るためのヒアリング調査を実施したりと、様々な手法を組み合わせ多角的に分析しながら施策を進めて行きたいと思っています。

こういった調査は、施策の何に活かすかが重要かと思うのですが、我々が考えているのは、施策の立案、いわゆる仮説を立てるときの材料としてSNSの評価や観光客のニーズなどが一番重要だと思っています。仮説を立てて施策を実行し、その検証は国の統計データを使うなど、データによってPDCAの中で使った方がいい部分があると思います。我々としては、SNS調査は施策の立案の部分、つまりPDCAのPの部分で非常に使えると思っています。これをエビデンスとして施策を打っていき、検証するというこの繰り返しを今後しっかりと確立していきたいというのが一つの目標です。

Q. 最後に、2030年に向けて、観光に関する数値目標などがあれば教えてください

A. 三浦課長:神奈川県では、旅行者の消費額を高めることを重視し、観光消費総額を数値目標として定めています。3年単位で目標を設定しており、現在の観光振興計画が期限を迎える2021年は観光消費総額1.3兆円を目標としています。訪問人数というよりその訪問者が使ったお金、要するにその人が行動したことによって、地域でお金が使われることで地域の活性化に効果として表れますし、観光客が地域の中で回れば、雇用にも将来的にもつながっていくと思っています。

神奈川県も少子高齢化は避けられないので、そうしたところを乗り切っていくためにも、観光を基幹産業に近づけていき、結果として地域にお金が入ってくるというのを目標にしていくことを考えています。観光客数を増やすという目標も今まではありましたが、今後はそれ以上に観光客の満足度を高めるという、数より質を重視していきたいと考えています。



三浦課長、熊澤様、今福様、インタビューへのご協力ありがとうございました。

参考:報告資料のサンプル(画像をクリックすると拡大表示します)

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