こんにちは、ソリッドインテリジェンスの土内です。
11月3日に行われる米大統領選について、これまで 第1回テレビ討論会の結果、第2回テレビ討論会の結果 をソーシャルリスニングという調査手法を用いて分析してきました。ソーシャルリスニングの分析結果からは、バイデン優勢の状況から、トランプ優勢の状況に変化した様子が確認できました。
本番直前となる今回は、大胆にも、選挙結果を予測してみたいと思います。
(もちろん、ソーシャルリスニングで!)
米大統領選は民主党のバイデン氏と共和党のトランプ氏が戦っていますが、アメリカは州によって「民主党寄り」「共和党寄り」「どちらにもなり得る」州に分かれており、「民主党寄り」「共和党寄り」の州では、投票結果は事前に概ね分かっています。
「どちらにもなり得る」州のことを「激戦州」と呼びますが、その州の選挙結果が全体の結果を左右するため重要な州とされています。
そこで今回は、バイデン氏/トランプ氏に関する投稿のうち、激戦州について言及している投稿をソーシャルリスニングツールで収集し、分析してみました。
※「激戦州」とされる州は一定ではなく、その時々で異なるようです。今回はこちらの日経新聞の記事を参考にしました。https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/presidential-election2020/swing-state/
調査対象としたデータは以下の通りです。
・メディア:Twitter
・地域:アメリカ
・言語:英語
・取得データ
①「激戦州名」「バイデン」の両方を含む投稿
②「激戦州名」「トランプ」の両方を含む投稿
・データ取得期間:2020年10月1日〜27日
※激戦州は、アリゾナ州、ジョージア州、ノースカロライナ州、ウィスコンシン州、フロリダ州、テキサス州、ペンシルベニア州、オハイオ州、アイオワ州、ネバダ州、ミネソタ州の11州とした
激戦州別、センチメントスコア対決
「激戦州名」「バイデン」の両方を含む投稿、「激戦州名」「トランプ」の両方を含む投稿のセンチメント(ポジティブ/ネガティブ/ニュートラル)の割合を確認し、この割合をもとにセンチメントスコアを算出しました。
※各投稿のセンチメントはソーシャルリスニングツールを使って機械判定しています。
※スコアの算出方法:Net Sentiment=ポジティブな投稿の割合−ネガティブな投稿の割合
それでは、激戦州における両者の結果を見てみましょう。
激戦州におけるセンチメントスコア
今回調査した11州のネットセンチメントの平均スコアを出してみると、トランプ氏のスコアがバイデン氏のスコアを上回っていました。
※州の大きさ=選挙人数の多さによる影響を考慮し、上記の数値を各州の選挙人数比率をもとに補正した数値も確認してみました。結果は、11州の平均でバイデン氏 0.00、トランプ氏 0.07となり、やはりトランプ氏のスコアの方が高いことがわかりました。
参考までに、8月と9月の期間についても同様の方法でスコアを算出してみました。8月、9月のいずれもバイデン氏の方が勝っているのですが、8月から9月にかけてその差が縮まり、10月にはトランプ氏が逆転していました。
センチメントスコアの月別推移
とくに注目のフロリダ州で、投稿量の推移を見てみよう
フロリダ州は、人口が多い(=選挙人も多い)ことに加え、民主党・共和党の支持が拮抗しており、激戦州の中でもとくに注目すべき州の一つと考えられています。
そこでフロリダ州についてもう少し細かく見ていきたいと思います。
まずは10月に入ってからの投稿量の推移を確認しました。
フロリダ州 – 投稿量の推移
ほとんどの期間でトランプ氏に関する投稿の方が多く、10月8日とその前の数日のみバイデン氏の方が多くなっています。
10月8日は、「ラテン系の人はバイデン氏に投票するな」という主旨の投稿や、「フロリダでバイデンの方が(世論調査で)勝っているなんて気にしない」といったネガティブな投稿を中心にバイデン氏の投稿量が伸びていました。
最も件数が多かったのは10月13日のトランプ氏に関する投稿ですが、こちらはフロリダ州での同氏の集会についての投稿が多数見られました(トランプ氏がダンスしている動画つきの投稿や、この集会を「スーパースプレッダーパーティー」と呼ぶ批判的な投稿など様々な内容です)。
とくに注目のフロリダ州で、センチメントの割合を見てみよう
続いて、フロリダ州に関する投稿のセンチメント(ポジティブ/ネガティブ/ニュートラル)の割合を確認しました。
※各投稿のセンチメントはソーシャルリスニングツールを使って機械判定しています。
フロリダ州 – センチメントの割合
トランプ氏の方がポジティブの割合が7%高く、ネガティブの割合が5%低いことがわかります。
このセンチメントの割合をもとに算出したセンチメントスコアは、前述の通り、バイデン氏-0.03、トランプ氏0.09でした。フロリダ州だけを見ても、トランプ氏の方がスコアが高いという結果になっていました。
おわりに
今回のソーシャルリスニングによる分析結果をもとに考察すると、ズバリ、
「11月3日の選挙では、トランプ氏が勝利する」
と予測することができそうです。
どちらに投票するかを投票日直前に決める人も多いとされている中、激戦州においてトランプ氏に関する投稿のセンチメントスコアが上昇してきている事実は見逃せません。また、隠れトランプ支持者(世論調査などに表れない支持者)も一定数いると言われています。
世論調査では依然としてバイデン氏がリードしていますが(10月28日時点)、最終的にはトランプ氏に投票する人の数がバイデン氏の投票数を上回る可能性が十分にあると言えるでしょう。
なお、今回取り上げたフロリダ州は規模が大きいだけでなく、投票結果の開票方法からも、注目に値すべき州と考えられています。すでに開始されている郵便投票・不在者投票の集計が他の州よりも早くから開始されることで、他の州に先駆けて投票結果が明らかになり始めるのがその理由です。
開票作業には時間がかかることが予測され、すべての州の開票作業には数日以上かかる可能性もあると言われています。通常投票と郵便投票を合わせた最終的な結果が分かるのは、選挙当日の11月3日より、少し先になるかもしれません。
今回の記事では、米大統領選のテレビ討論会について、ソーシャルリスニングによる以下の分析をご紹介しました。
- Twitterの投稿数を比較する
- 投稿のセンチメントの割合を見る
- センチメントをスコア化して比較する